虫歯治療

虫歯の原因

虫歯の原因

虫歯の原因は、口腔内の細菌が産生する酸です。口腔内細菌が糖質を代謝し、歯のエナメル質を溶かすことから発生します。虫歯が発生しやすい場所は、歯垢(プラーク)が付きやすい場所、歯ブラシが届きにくい場所、ブラッシングしにくい場所です。

子どもの場合は、歯の溝や奥歯、歯と歯の間の隙間に虫歯の好発部位です。大人の場合はそのほかに、加齢や歯周病により歯肉後退が生じ、口腔内に露出した歯根面と、詰め物やかぶせ物をしている、過去に歯科治療を施した歯が挙げられます。

口腔内に露出した歯根は、エナメル質よりも柔らかいセメント質・象牙質で構成されているため、虫歯が発生・進行しやすいという特徴があります。

過去に歯科治療を施した歯は、詰め物の内部は象牙質のため、虫歯が深部に達しやすくなります。また、歯の神経を処置した場合、歯痛を感じないため発見が遅れがちになってしまいます。虫歯の初期段階であれば、治療も小さく済みます。虫歯のチェック、プラークの除去・メンテナンスを目的に、定期的(2~3か月が目安)に歯科受診することをお勧めします。

虫歯のリスクについて

歯痛

歯痛

虫歯を長期間放置していると、患部が深部に到達し歯髄(歯の神経)に痛みを感じるようになります。一般的に歯痛は「身体痛の中で一番鋭い」といわれるような、ズキズキと鋭く強い痛みです。

膿瘍

膿瘍

歯髄に到達した後も放置した場合、歯根の先まで感染部位が拡大します。歯根の先に感染組織が到達すると、根尖(歯の根の先)に膿が溜まります。膿の出口が確保されている場合は痛みを伴わず、違和感程度で済むことがあります。

しかし、出口が確保されていなかった場合は、顎の骨を溶かして膿の出口を作ってきます。また、出口が小さく膿が排出される量よりも多く膿が溜まってきた場合は膿瘍となり、顎が大きく腫れて、熱発や悪寒などの症状が現れます。最悪の場合、上顎であれば失明、下顎であれば呼吸困難をきたし、生命の危機に瀕することも考えられ、大学病院に入院して処置を行う必要があります。

上顎洞炎

上顎洞炎

上顎の歯で虫歯を放置し歯根の先まで感染部位が拡大、根尖に膿が溜まった場合は、上顎の骨を溶かし、副鼻腔(上顎洞)に膿が到達することがあります。その場合、副鼻腔炎(歯性上顎洞炎)となり、頭痛、発熱、悪寒等の症状が現れ、ひどくなると後鼻漏などに拡大します。

歯の喪失

歯の喪失

虫歯が進行し、歯の修復治療(詰め物)や補綴治療(かぶせ物)を行えない場合、抜歯が適応になります。抜歯後は、入れ歯(義歯)・ブリッジ・インプラントにより、失われた歯を補う必要があります。

抜歯後に治療せず放置していると、噛み合わせが変化し、歯周炎が進行しやすくなり、歯並びに影響が現れます。発音がしにくく話が聞き取りにくくなったり、審美性が損なわれ口を大きく開けて笑えなくなったりします。

また、奥歯を失い放置した場合は、咀嚼機能が低下し、顔の表情や輪郭が変化します。

虫歯の段階毎の症状と治療法

C0:虫歯になる一歩手前

C0:虫歯になる一歩手前

痛みを感じることはない。歯に穴が開くこともない。歯の表面が白濁・茶色に着色。

治療法
要経過観察。口腔内のクリーニング、適切なブラッシング、フッ化物の塗布等で歯の再石灰化を期待する。生活習慣、食生活の見直しが必要になることもある。

C1:初期虫歯(エナメル質に限局した虫歯)

C1:初期虫歯(エナメル質に限局した虫歯)

エナメル質に進行しているが、エナメル質までに限局。痛みは感じないが、歯に穴が開いている。白濁や茶色~黒く着色している。

治療法
虫歯の部分を切削し、虫歯を取り除く。削って失われたエナメル質の部分は、コンポジットレジンを詰めて歯を修復する。エナメル質下層の象牙質に虫歯が及ぶ前に治療を行えば、痛みなく治療を終えられる。

C2:象牙質に到達した虫歯(象牙質までに限局した虫歯)

C2:象牙質に到達した虫歯(象牙質までに限局した虫歯)

エナメル質を超えて、下層の象牙質まで虫歯が到達した状態。歯に穴が開いている。茶色~黒く着色。冷たいものや甘いもので痛みを感じる。

治療法
虫歯の部分を切削し、虫歯を取り除く。削る範囲も広く・深くなりC1の状態よりも虫歯が進行しているため、治療時に痛みを伴う。削って失われた歯を、コンポジットレジンを詰めて歯を修復する。範囲が広くなり噛む力に耐えられない場合は、金属の詰め物(インレー・アンレー)で歯を修復する。治療に痛みを伴うため、麻酔を行って治療する。

C3:歯の神経(歯髄)まで到達した虫歯

C3:歯の神経(歯髄)まで到達した虫歯

エナメル質・象牙質を超えて、歯の神経(歯髄)まで虫歯が到達した状態。熱いもので痛みを感じる。虫歯の原因菌が歯髄に達し、歯髄で炎症(歯髄炎)が起きているため、激しい自発痛(何もしなくても痛い)、咬合痛(噛むと痛い)が現れることもある。茶色~黒く着色。歯に穴が開いて、歯の形も崩れていることが多い。

治療法
虫歯の部分を切削し、虫歯を取り除く。歯の神経を取り除き根管治療を実施する。治療の回数は増える。根管治療後は歯根に土台を作り、虫歯によって失われた歯の範囲が大きいため、かぶせ物(クラウン)で歯を作る(補綴)。

根管治療の詳細

C4:歯根まで進行した虫歯

C4:歯根まで進行した虫歯

冷たいもの・熱いものでしみる・痛む症状はなくなる。歯根まで虫歯が達し、歯髄も壊死し、根尖に膿が溜まっている。歯肉が腫れ噛むと痛みを感じたり、根尖に膿の袋(嚢胞)が出来たり、膿が顎骨を溶かし激しい自発痛・咬合痛を伴うこともある。歯のほとんどが虫歯で崩れている状態。

治療法
歯根に及んだ虫歯の範囲が小さい場合は根管治療を実施し、歯を保存することもある。しかし、歯根に及んだ虫歯の範囲が大きい場合は保存が困難になり、抜歯を行う。抜歯後は、入れ歯(義歯)・ブリッジ・インプラントにより、失われた歯を補う。

虫歯の再発リスクについて

虫歯の発生に関するリスク因子は、

A. 口腔内常在虫歯原因菌の数、種類
B. 唾液量と唾液の能力
C. 歯垢・プラーク量
D. 食生活、生活習慣
E. 詰め物やかぶせ物の適合具合
F. フッ素の使用量

等が挙げられます。

虫歯治療後の再発リスクは、上記のリスク因子に依存します。そのうち、A 、Bについては、各個人固有の口腔環境のため、本人も含めてコントロールが困難です。したがって、C ~F に注意して虫歯の再発リスクをコントロールする必要があります。

C: 歯垢・プラークの停滞量を減らすよう正しいブラッシング方法を学び、フロスや歯間ブラシなどの補助的清掃器具を使用し、歯科医院で定期的な口腔ケア・メンテナンスを実施していく。

D: 糖分の多い食べ物や飲み物を、時間をかけて摂取しない。食後の歯みがき・ブラッシングを行うこと、就寝前は徹底的に歯垢・プラークを除去する等の生活習慣を身につける。

E: より適合のよい詰め物、かぶせ物で治療する。適合がよくない治療済みの歯を再治療する。

F: フッ素含有歯磨剤を使用する。定期的な口腔ケア・メンテナンスを実施し、フッ素塗布を行う。

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虫歯の治療で患者様に対して大切にしていること

虫歯治療で大切にしていること

虫歯の治療は、「可能な限り削る量を少なくすること」が大原則です。発見・治療が早ければ早いほど、処置は小さく削る量も少なく済みます。反対に発見・治療が遅れれば遅れるほど、処置は大きく削る量も多くなり、最悪の場合は抜歯となります。

虫歯の治療は歯を削る処置となりますが、本来であれば削らずに済むよう定期的にチェックし、虫歯にならないように予防をすることが、治療の第一歩です。残念ながら虫歯なってしまった場合も、最小限の処置で済むように治療しましょう。

残念なことに、歯の神経の治療になってしまった場合でも同様に、最小限の処置で済ますことが歯の寿命を長くすることにつながります。確実に齲蝕を検知し、虫歯に罹患した歯質を取り除きながら虫歯の治療を行います。

虫歯を取り除いた後は、患者さんの希望を最大限に考慮しながら、メリット・デメリットをお伝えして治療法を決めていきます。一緒に治療に取り組むことが、患者さんのメリットにつながると考えていますので、相談しながら治療を行っていきましょう。