口腔悪性腫瘍

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口腔悪性腫瘍について

口腔内の解剖、口腔悪性腫瘍、口腔癌の疫学について説明していきます。

口腔内の解剖

口腔の解剖は図に示す通りです。
口腔悪性腫瘍について

口腔悪性腫瘍

口腔がんの好発年齢は50歳以降で加齢とともに増加。
男女比3:2と男性に多いのが特徴です。
これまで国内罹患数は年間5,000~8,000人で推移していたが、近年の罹患数は年間1万人と増加傾向にあります。

部位別発生率(2020年の口腔がん登録の結果)は、舌(47.1%)、下顎歯肉(18.4%)、上顎歯肉(11.9%)、頬粘膜(8.6%)、口底(6.6%)、硬口蓋(2.6%)、下顎骨中心性(1.7%)、下唇(0.8%)となる。
初診時の頸部リンパ節の転移頻度は25%、遠隔転移は1%ほどである。

口腔に発生する悪性腫瘍のそのほとんどは、上皮性悪性腫瘍すなわち扁平上皮癌です。

舌悪性腫瘍(舌がん)

舌悪性腫瘍(舌がん)は、口腔がんの中で最も発生頻度が高く、全体の約47.1%を占める病気です。主に舌の側面や舌の裏側(舌縁部)にできやすく、進行すると話す・食べる・飲み込むといった日常動作に影響を及ぼすことがあります。

口腔悪性腫瘍
口腔悪性腫瘍
口腔悪性腫瘍

舌悪性腫瘍の主な症状

🔹初期症状(気づきにくいサイン)

  • 治りにくい口内炎のようなしこりや潰瘍がある
  • 舌の一部に白い(白板症)または赤い(紅板症)斑点ができる
  • 舌に違和感や軽い痛みがある

🔹進行すると現れる症状

  • 痛みが強くなり、食事の際にしみる
  • 舌の可動域が狭くなる(話しづらい、飲み込みにくい)
  • 出血しやすい、しこりが大きくなる
  • 顎の下のリンパ節が腫れる

歯肉悪性腫瘍(歯肉がん)

歯肉悪性腫瘍(歯肉がん)は、歯ぐき(歯肉)に発生する悪性腫瘍で、口腔がんの中でも比較的発生頻度が高いがんの一つです。
部位別の発生頻度は以下のようになっています。

上顎歯肉:11.9%
下顎歯肉:18.4%
硬口蓋(口の上部):2.6%

上顎よりも下顎に発生するケースが多いのが特徴です。進行すると顎の骨(歯槽骨)や周囲の組織に影響を及ぼすため、早期発見が非常に重要です。

口腔悪性腫瘍
口腔悪性腫瘍
口腔悪性腫瘍

歯肉悪性腫瘍の主な症状

🔹初期症状(気づきにくいサイン)

  • 歯ぐきの一部が腫れている(しこりのような膨らみ)
  • 硬いしこりやできものができる
  • 歯ぐきに治りにくい傷や潰瘍がある
  • 歯ぐきが赤くただれる、または白っぽく変色する

🔹進行すると現れる症状

  • 痛みが強くなり、歯磨きや食事で出血しやすくなる
  • 顎の骨に浸潤し、歯がグラグラする・抜け落ちる
  • 口の開閉がしにくくなる(顎の違和感・痛み)
  • 顎の下や首のリンパ節が腫れる

口底悪性腫瘍と頬粘膜悪性腫瘍

口底悪性腫瘍(口底がん)は、舌の裏側から下顎の歯ぐきにかけての口底部分に発生するがんです。口腔がん全体の約8.6%を占めており、進行すると舌や顎の骨へ広がることがあるため、早期発見が重要です。

口腔悪性腫瘍
口腔悪性腫瘍
口腔悪性腫瘍

口底悪性腫瘍の主な症状

🔹初期症状(気づきにくいサイン)

  • 口底の粘膜に白い斑点(白板症)や赤い斑点(紅板症)ができる
  • 舌の裏側や口底部分にしこりや腫れがある
  • 治りにくい傷や潰瘍ができる
  • 軽い違和感やしみる感じがある

🔹進行すると現れる症状

  • 痛みが強くなり、食事の際にしみる
  • 顎の動きに制限がかかり、話しづらくなる
  • 舌や下顎の歯茎が腫れ、歯のぐらつきが起こる
  • 顎の下や首のリンパ節が腫れる

口腔がんの病期分類について

口腔がんの進行度は, 病期(Stage)分類で表します。 世界的にはTNM分類がよく使われ、T因子(腫瘍;tumorの頭文字、腫瘍の進行度を示す)、 N因子(リンパ節;lymph nodeのnodeの頭文字、リンパ節転移の有無を示す)、 M因子(転移;metastasisの頭文字、リンパ節転移以外の遠隔転移のこと)の、 3つの因子から成り立っています。

口腔がんの病期分類(TNM分類とStage分類)

口腔がんにおけるTNM分類は、下に示す通りです。
口腔がんの病期分類について
口腔がんの病期分類について
口腔がんの病期分類について

UICC: TNM cassificationof malignant tumours, Edited by L.H.Sobin and Ch.Wittekind. 6 th ed. Wiley-Liss. Ney York, 2002, P22-26.(追加論文)

口腔がんの病期分類について

口腔がんのstage分類はTNM分類をもとにstage1~4Cに分けられます。口腔がんにおいて病期分類を行う理由は2つです。

  • 予後を予測する根拠になること
  • 病期(Stage)ごとに適した治療法を選ぶこと

口腔がんの病期分類について

口腔がんの病期分類について
Weinberg RA: Cancer Res 49; 1989

病期別の発生頻度と予後について

口腔悪性腫瘍(口腔がん)の予後は、診断時の進行度によって大きく異なります。特に、早期に発見され適切な治療が行われた場合と、進行してから治療を開始した場合では、生存率に大きな差が生じます。一般的に、口腔がんの初期段階では治療の選択肢も多く、手術や放射線治療により完治を目指せるケースが多くなります。この段階での5年生存率は80〜95%と非常に高く、適切な対応をすることで日常生活への影響も比較的少なく抑えられます。しかし、がんが進行し、リンパ節への転移や顎の骨・周囲の組織へ浸潤が広がると、治療の難易度が上がり、5年生存率は60〜75%程度に低下します。さらに、遠隔転移が認められるような進行した状態では、根治治療が難しくなり、35〜45%まで生存率が低下することが知られています。

口腔がんは、初期の段階では痛みを感じにくく、自覚症状が少ないため、発見が遅れやすいがんの一つです。そのため、少しでも違和感を感じた場合には、速やかに歯科や口腔外科を受診することが重要です。また、定期的な歯科検診を受けることで、口腔内の異常を早期に発見し、治療につなげることが可能となります。

口腔癌の治療

①手術
(外科的治療)

  • 腫瘍切除術
  • 頚部郭清術
  • 再建手術(皮膚移植, 有茎皮弁・遊離皮弁移植)

②放射線療法
(術前・術後補助療法)

③化学療法
(術前・術後補助療法)

以上を組み合わせた3者併用療法が用いられる.

口腔悪性腫瘍(口腔がん)の治療では、基本的に外科的治療(手術)が第一選択となります。早期発見の場合、手術のみで根治が可能なケースもありますが、進行度や患者さまの状態によっては放射線治療や化学療法が選択されます。

また、手術前に腫瘍を小さくする目的で放射線・化学療法を行うこともあれば、手術後に残存がん細胞の消失や再発予防のために併用することもあります。病状に応じて治療法を組み合わせ、最適な治療計画を立てることが重要です。

口腔がんは初期症状が少なく、気づきにくい病気です。早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、違和感があれば早めの受診を心がけましょう。 また、定期的な歯科健診を受けることで、がんの兆候を見逃さず、より早い段階で治療につなげることができます。